ものづくり補助金とは?基本の仕組みを中小企業診断士×行政書士が解説

ものづくり補助金とは?基本の仕組みを中小企業診断士×行政書士が解説

ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者の設備投資を支援する国の補助金制度です。「ものづくり補助金」と聞くと、製造業だけが使える補助金だと思われがちです。しかし正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」。食品、小売、IT、サービス業など、幅広い中小企業・小規模事業者が対象です。

本記事では、制度の基本的な仕組みと、申請前に必ず知っておくべきポイントをお伝えします。

ものづくり補助金とは

ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者が革新的な新製品・新サービスの開発海外需要開拓に必要な設備投資等を行う際に、その費用の一部を国が補助する制度です。

目的は「生産性の向上」と「経済の活性化」。単に古い機械を新しいものに買い替えるだけでは対象になりません。顧客に新たな価値を提供する取り組みであることが求められます。

補助金は経済産業省が所管し、中小企業基盤整備機構・全国中小企業団体中央会が事務局となって運営しています。公募は年に複数回行われており、直近では第23次公募(2026年2月〜5月)が実施されました。詳細はものづくり補助金総合サイトでご確認いただけます。

ものづくり補助金とは

ものづくり補助金の対象となる事業者

以下の要件を満たす事業者が対象です。

  • 日本国内に事業所があること
  • 常時使用する従業員が1人以上いること
  • 中小企業者・小規模事業者等に該当すること

業種による資本金・従業員数の上限は異なります。たとえば製造業・建設業・運輸業などは資本金3億円以下または従業員300人以下、サービス業は資本金5,000万円以下または従業員100人以下が目安です。

冒頭でも触れたとおり、「ものづくり」という名称ながら製造業に限らず、食品・小売・IT・サービス業など幅広い業種が対象です。まずは自社が要件を満たすか確認することが第一歩です。

補助額と補助率(直近の公募を参考に)

直近の第23次公募では、以下の内容で実施されました。次の公募では制度が変わる可能性がありますが、規模感の参考としてご覧ください。

従業員数 補助上限額 補助率
製品・サービス
高付加価値化枠
1〜5人 750万円 中小企業:1/2
小規模事業者:2/3
6〜20人 1,000万円
21〜50人 1,500万円
51人以上 2,500万円
グローバル枠 規模問わず 3,000万円 中小企業:1/2
小規模事業者:2/3

※大幅な賃上げに取り組む事業者には、補助上限額が最大1,000万円上乗せされる特例もあります。

補助下限額は100万円。少なくとも200万円以上(補助率1/2の場合)の設備投資が前提になります。また、単価50万円(税抜)以上の機械装置等の取得が必須です。

ものづくり補助金の基本要件

ものづくり補助金は、補助事業終了後3〜5年間の事業計画において、以下の基本要件をすべて満たすことが求められます。

  • ①付加価値額の増加:事業者全体の付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率を+3.0%以上増加させること
  • ②賃金の増加:従業員1人あたり給与支給総額の年平均成長率を+3.5%以上増加させること(未達の場合、補助金返還義務あり)
  • ③事業所内最低賃金:事業所内の最低賃金を、都道府県の最低賃金より+30円以上高い水準に毎年維持すること(未達の場合、補助金返還義務あり)
  • ④仕事・子育て両立支援(従業員21名以上の場合のみ):次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定・公表すること

特に②③は未達成の場合に補助金の返還義務が発生します。採択後も長期にわたって要件を維持し続ける必要があることを、申請前に必ず理解しておいてください。

ものづくり補助金の基本要件

※23次公募の場合

ものづくり補助金の補助対象経費

補助金の対象となる主な経費は以下のとおりです。なお、単価50万円(税抜)以上の機械装置等の設備投資が必須であり、設備投資を伴わない申請は認められません。

  • 機械装置・システム構築費(必須):機械・装置、工具・器具、専用ソフトウェア・情報システムの購入・構築など
  • 技術導入費:知的財産権等の導入に要する経費(上限:補助対象経費の1/3)
  • 専門家経費:本事業のために依頼した専門家への報酬(上限:補助対象経費の1/2)
  • 外注費:新製品・新サービス開発に必要な加工・設計・検査等の外注(上限:補助対象経費の1/2)
  • クラウドサービス利用費:専ら本事業のために利用するクラウドサービスの費用
  • 原材料費:試作品の開発に必要な原材料・副資材の購入費

一方で、対象外となる経費も多くあります。たとえば汎用性のあるパソコン・スマートフォン・事務用品、建物の建設費・工事費、自動車購入費などは対象外です。また、機械装置・システム構築費以外の経費は合計で500万円(税抜)が上限となります。

ものづくり補助金の申請に必要な書類

申請時に必要な書類は「全事業者が必要な書類」と「該当者のみ必要な書類」に分かれます。書類の不備や不足があると審査対象外となるため、事前にしっかり準備しておくことが重要です。

全事業者が必要な書類

  • 事業計画書:電子申請システムに本文を入力し、補足の図や画像をA4サイズ5ページ以内のPDFで提出。空白ページも1枚とカウントされるため注意が必要。
  • 決算書等(直近2期分):法人は貸借対照表・損益計算書・販売費及び一般管理費明細書・製造原価報告書・個別注記表。個人事業主は確定申告書(第一表〜第五表)。創業1年未満の場合は事業計画書および収支予算書。
  • 従業員数の確認資料:法人は法人事業概況説明書の写し+労働者名簿の写し。個人事業主は収支内訳書または青色申告決算書の写し+労働者名簿の写し。
  • 補助経費に関する誓約書:電子申請システム上で誓約。
  • 賃金引上げ計画の誓約書:電子申請システム上で誓約。
  • GビズIDプライムアカウント:電子申請に必須。発行に数週間かかるため早めに準備すること。

該当者のみ必要な書類

  • 次世代法一般事業主行動計画の確認(従業員21名以上):厚生労働省「両立支援のひろば」に公表した一般事業主行動計画のURLを電子申請システムに入力。
  • 再生事業者に係る確認書(再生事業者のみ):再生事業者であることを証明する書類。
  • 大幅な賃上げに係る計画書(特例申請者のみ):補助上限額引上げの特例を申請する場合に所定様式で提出。
  • 最低賃金引上げ特例に係る確認資料(特例申請者のみ):要件を満たす任意の3か月分の雇用状況確認書+賃金台帳の写し。
  • 資金調達に係る確認書(金融機関から資金調達する場合):所定様式で提出。
  • 海外事業の準備状況を示す書類(グローバル枠申請者のみ):海外市場調査報告書・海外子会社の財務諸表・共同研究契約書など、申請するグローバル要件に応じた書類。
  • 加点関係資料(加点申請者のみ):経営革新計画承認書、事業継続力強化計画、賃金台帳など、申請する加点項目に応じた書類。最大6項目まで申請可能。

なお、全ての書類はPDF形式で提出し、所定のファイル名に従って命名する必要があります。書類の様式や提出方法は公募回ごとに変わる場合があるため、必ずものづくり補助金総合サイトで最新の公募要領を確認してください。

申請前に必ず知っておくべき3つのポイント

① 「後払い」である

補助金は、事業を実施した後に請求して初めて支払われる後払いの仕組みです。採択されたからといって、すぐにお金が振り込まれるわけではありません。設備の購入・導入・実績報告・確定検査を経て、ようやく入金となります。

そのため、事業実施中の資金繰りは自己資金や融資で賄う必要があります。資金調達の計画も含めて準備することが重要です。

② 「交付決定の前に発注・購入してはいけない」

採択の通知を受けても、その時点ではまだ発注・契約・購入してはいけません。交付決定の通知を受けた後でなければ、補助対象経費として認められません。このルールを知らずに先走ってしまうと、せっかく採択されても補助金を受け取れなくなります。

採択=即発注、ではないことを必ず覚えておいてください。

③ 「採択がゴールではない。賃上げ目標の未達は返還義務あり」

採択後も、補助事業終了後3〜5年間にわたって事業計画の進捗を報告する義務があります。前述の基本要件②③を達成できなかった場合は補助金の返還が求められます。補助金はもらって終わりではありません。会社全体の事業計画と連動させ、実現可能な目標を設定したうえで申請することが大切です。

申請の大まかな流れ

ものづくり補助金の申請から入金までは、おおむね以下の流れになります。

  1. 公募開始・申請 ─ 電子申請システム(GビズIDが必要)で事業計画書等を提出
  2. 審査・採択発表 ─ 外部有識者が書面審査。申請から約3ヶ月後に結果公表
  3. 交付申請・交付決定 ─ 採択後に交付申請を行い、事務局が経費内容を精査して交付決定
  4. 補助事業の実施 ─ 交付決定後に発注・購入・実施(ここで初めて動ける)
  5. 実績報告・確定検査 ─ 事業完了後に報告書を提出し、検査を受ける
  6. 補助金の請求・支払い ─ 確定後に請求、入金
  7. 事業化状況報告 ─ その後5年間、毎年報告が必要

申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必要で、発行に一定の時間がかかります。申請を検討している場合は早めに準備を始めることをおすすめします。

申請の流れ

今後の制度について

第23次公募の案内資料には、「次年度以降については、新事業進出・ものづくり補助金として公募を予定」と記載されています。中小企業新事業進出補助金との統合が予定されており、今後制度の内容が変わる可能性があります。

詳細が公表され次第、当ブログでお知らせします。

まとめ

ものづくり補助金は、新製品・新サービス開発への設備投資を支援する、中小企業にとって活用価値の高い制度です。ただし、制度の仕組みをよく理解せずに申請すると、採択後に想定外の事態になることもあります。

特に以下の点は必ず押さえておいてください。

  • 補助金は後払い。資金繰りの準備が必要
  • 交付決定前の発注はNG。採択≠すぐ動ける
  • 賃上げ要件の未達は返還義務あり。実現可能な計画を
  • 機械装置等の単価50万円以上の設備投資が必須

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