新事業進出・ものづくり補助金の活用が向いている会社とは|経営者目線で見る判断のポイント

新事業進出・ものづくり補助金 活用が向いている会社とは?

「新事業進出・ものづくり補助金の活用は、自社に向いているのだろうか」――中小企業診断士としてご相談を受ける中で、このような声をよく耳にします。制度の対象になるかどうかだけでなく、そもそも自社の経営課題に合った投資といえるかどうかは、申請を検討する前に整理しておきたいポイントです。

本記事では、新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 特設サイトおよび第1回公募要領を参考に、経営視点でどんな会社に活用が向いているのか、また「革新的新製品・サービス枠」と「新事業進出枠」のどちらが近いかを整理します。各枠の詳しい内容は「革新的新製品・サービス枠」の解説記事・「新事業進出枠」の解説記事もあわせてご覧ください。

新事業進出・ものづくり補助金の活用を検討する前に押さえておきたいこと

本制度には「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3枠があり、このうち多くの中小企業にとって候補になりやすいのが前の2枠です。いずれも、既存の製品・サービスをそのまま維持・改善するだけの計画は対象になりません。

「革新的新製品・サービス枠」は、自社の技術力を活かした新製品・新サービスの開発そのものが対象です。一方「新事業進出枠」は、新製品・新サービスの開発に加えて、それを自社にとって新たな市場・顧客層に投入することまで求められます。

本制度は2026年6月に公募が始まったばかりの新しい制度です。旧ものづくり補助金のように長期間の採択実績が積み上がっているわけではないため、以下でお伝えするポイントは、実績の傾向ではなく、公募要領に示された審査基準・対象要件から見た構造的な特徴として捉えてください。

新事業進出・ものづくり補助金の活用が向いている会社の特徴|経営視点でみる5つのポイント

公募要領の対象要件・採択基本要件をふまえると、次のような会社は本制度の活用を前向きに検討しやすいと考えられます。

① 既存プロセスの改善ではなく、新製品・新サービスの「開発」に取り組んでいる

両枠に共通する前提として、既存の製品・サービスの生産プロセスの改善や、開発を伴わない単なる設備導入は対象外です。「何を新しく生み出すのか」を具体的に説明できる計画であることが出発点になります。

② 付加価値額・賃上げ目標を経営計画として打ち出せる

採択の基本要件として、付加価値額の年平均成長率+4.0%以上、1人当たり給与支給総額の年平均成長率+3.5%以上、事業場内最低賃金を地域最低賃金+30円以上とすることなどが求められます。これらは未達成の場合に補助金の返還義務が生じる重要な項目のため、無理のない範囲で経営計画に落とし込める体力がある会社ほど、申請の土台が整いやすいといえます。

③ 自社にとっての新規性を、具体的な根拠とともに説明できる

新事業進出枠を検討する場合、「社会における新規性」をデータ・統計等で示すか、「高付加価値化・高価格化」を調査・分析等で示すか、いずれかの裏付けが必要です。感覚的な新しさではなく、客観的な根拠で語れる計画であるほど、この枠の趣旨に合っています。

④ 新市場向けの店舗・工場など、まとまった投資を計画している

新事業進出枠は建物費(新設・改修とも)が対象経費に含まれ、補助上限額も革新的新製品・サービス枠より大きく設定されています。新市場への進出にあたって、設備だけでなく建物への投資もあわせて必要になる計画は、新事業進出枠が候補になりやすい傾向にあります。

⑤ ワークライフバランスなど社内制度の整備にも取り組める体制がある

採択要件には、次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・公表や、子育て等に関する職場環境整備の取り組みも含まれます。一般事業主行動計画は公表まで1〜2週間程度かかるため、こうした社内制度の整備にも早めに着手できる会社のほうが、準備を進めやすいといえます。

新事業進出・ものづくり補助金 活用を考える会社の視点

「革新的新製品・サービス枠」と「新事業進出枠」、どちらが向いているか

活用が向いていそうだと感じた場合、次はどちらの枠が近いかを考えます。ごく簡単な目安は、新しい市場・顧客層への進出を伴うかどうかです。

新製品・新サービスの開発にとどまるなら「革新的新製品・サービス枠」、それを自社にとって新たな市場に投入するところまで計画に含むなら「新事業進出枠」が候補になります。ただし新事業進出枠は、創業後1年未満の事業者は対象外という制約もあるため、創業間もない会社は自動的に革新的新製品・サービス枠での検討になります。

より詳しい判断チャートは、「新事業進出枠」と「革新的新製品・サービス枠」の違いを比較した記事で整理していますので、あわせてご覧ください。

新事業進出・ものづくり補助金 2つの枠を考える視点

新事業進出・ものづくり補助金の活用を見送ってもよいかもしれないケース

一方で、次のような場合は、本制度の活用にこだわらず、別の選択肢もあわせて検討しておくと安心です。

既存の製品・サービスの改善や、既存プロセスの効率化が中心の計画には、本制度はそもそも向いていません。省力化投資補助金など、既存業務の効率化を直接の目的とする制度のほうが趣旨に近い場合があります。

資金繰りの面でも注意が必要です。補助金は経費を一度自己資金で支払ったあとに精算払いで受け取る仕組みのため、交付決定前の資金計画を描けない会社にとっては負担が大きくなります。

また、省力化投資補助金など中小企業庁が所管する他の補助金と同一の経費で併用することはできません。複数の補助金をまたいだ資金計画を考えている場合は、経費の切り分けを事前に整理しておく必要があります。

新事業進出・ものづくり補助金の活用のまとめ

新事業進出・ものづくり補助金は、単に設備を導入するだけでなく、新製品・新サービスの「開発」と、経営計画としての成長目標まで含めて評価される制度です。特に以下の点は判断材料として押さえておきましょう。

  • 既存プロセスの改善ではなく、新製品・新サービスの「開発」に取り組んでいるか
  • 付加価値額+4.0%、賃上げ+3.5%などの成長目標を経営計画として描けるか
  • 新事業進出枠を検討するなら、新規性・新市場性を客観的な根拠で説明できるか
  • 建物費を含むまとまった投資を計画しているか(新事業進出枠の目安)
  • ワークライフバランス関連の社内制度整備にも早めに着手できるか
  • 補助金は精算払いのため、交付決定前の資金計画を描けるか

「自社の場合、活用が向いているか判断したい」「革新的新製品・サービス枠と新事業進出枠のどちらで申請すべきか迷っている」など、具体的なご相談はお気軽にご連絡ください。初回相談は無料、全国オンライン(Zoom)対応しています。

参考情報

本記事の内容は、以下の一次情報をもとに作成しています。申請を検討される際は、必ず最新の公募要領をご確認ください。

執筆:中小企業診断士×行政書士 瀧澤はるか