「新事業進出枠」と「革新的新製品・サービス枠」の違いは?迷ったときの選び方

新事業進出・ものづくり補助金(正式名称:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金)には「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3枠がありますが、実際にご相談を受けていて最も多いのが新事業進出・革新的新製品の違いが分からず、どちらの枠で申請すればよいか迷っているというお悩みです。
本記事では、両枠の制度内容の違いを比較表で整理したうえで、自社の計画がどちらに近いかを判断するための簡易チャートをご紹介します。それぞれの枠の詳細は、「革新的新製品・サービス枠」の解説記事と「新事業進出枠」の解説記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
新事業進出枠・革新的新製品枠、根本的な違いはどこにあるか
2つの枠は、どちらも自社の技術力を活かして新しい製品・サービスを開発し、顧客に新たな価値を届けることを求めている点は共通しています。違いは、新しい市場・顧客層への進出が要件として求められるかどうかにあります。
「革新的新製品・サービス枠」は、新製品・新サービスの開発自体が対象で、それを既存の市場に投入するか新しい市場に投入するかは問われません。一方「新事業進出枠」は、新製品・新サービスの開発に加えて、それを自社にとって新たな市場・顧客層に投入することまで要件として求められます。

比較表で見る5つの違い
| 項目 | 革新的新製品・サービス枠 | 新事業進出枠 |
|---|---|---|
| 対象となる取り組み | 自社の技術力を活かした新製品・新サービスの開発 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出 |
| 審査の追加基準 | 特になし(新製品・サービス開発であることが前提) | 「社会における新規性」をデータ・統計で、または「高付加価値化・高価格化」を調査・分析で裏付ける必要あり |
| 補助上限額 | 750万円〜2,500万円(賃上げ特例850万円〜3,500万円) | 2,500万円〜7,000万円(賃上げ特例3,000万円〜9,000万円) |
| 補助下限額 | 100万円 | 750万円 |
| 建物費の対象可否 | 対象外 | 対象(新設・改修とも可) |
| 実施期間 | 交付決定日から10か月以内 | 交付決定日から14か月以内 |
| 創業間もない事業者 | 制限なし | 創業後1年未満は対象外(決算書1期分以上必須) |
特に見落とされがちなのが建物費の対象可否と創業間もない事業者の扱いです。新しい店舗や工場への投資を計画している場合は、この時点で新事業進出枠が候補になりますし、逆に創業1年未満の事業者は新事業進出枠を選べないため、必然的に革新的新製品・サービス枠での申請を検討することになります。
判断チャート:自社の計画はどちらに近いか
次の質問に順番に答えていくことで、自社の計画がどちらの枠に近いか、大まかな目安をつけることができます。あくまで一次的な目安であり、最終的な判断は公募要領の要件と自社の事業計画を照らし合わせたうえで行ってください。
Q1.今回の計画は、既存事業とは異なる新しい市場・顧客層への進出を伴うか?
→ はいの場合:Q2へ
→ いいえの場合:革新的新製品・サービス枠が候補になります。自社の技術力を活かした新製品・新サービス開発に該当するか、次の質問で確認してください。
Q2.新市場向けの店舗・工場など、建物への投資を伴うか、または補助上限額2,500万円を超える投資規模になるか?
→ はいの場合:新事業進出枠が候補になります。ただし創業後1年未満の場合は対象外のため、革新的新製品・サービス枠での申請可否を確認してください。
→ いいえの場合:新事業進出枠・革新的新製品・サービス枠のどちらも制度上は候補になり得ます。市場の新規性や高付加価値性を客観的な根拠で説明できるかどうかで判断してください。
Q3.「製品等の属するジャンル・分野が社会的にまだ珍しい」ことをデータ・統計等で、または「同じジャンルの中で高水準の高付加価値化・高価格化を図れる」ことを調査・分析等で、それぞれ裏付けられるか?
→ はいの場合:新事業進出枠の審査基準を満たせる可能性が高いです。
→ いいえ・分からないの場合:無理に新事業進出枠を狙わず、革新的新製品・サービス枠での申請を検討したほうが、審査基準との整合性が取りやすくなります。

それでも判断がつかないときの考え方
上のチャートで大まかな方向性はつかめても、Q2・Q3のように「どちらも制度上は候補になり得る」というケースでは、それだけで決めきれないこともあるかと思います。そうした場合は、「補助金ありきで枠を選ぶ」のではなく、自社の中期計画において、この投資が『既存事業の強化』なのか『新しい柱づくり』なのかを先に整理することをおすすめしています。
補助上限額の大きさだけを見て新事業進出枠を選ぼうとする事業者様もいらっしゃいますが、審査基準(新市場性・高付加価値性の客観的な裏付け)を満たせない計画で無理に新事業進出枠を狙うと、かえって採択の可能性を下げてしまうことがあります。上限額の大きさよりも、自社の計画が制度の要件に自然に当てはまっているかを優先して枠を選ぶことが、結果的に近道になります。
新事業進出・ものづくり補助金の申請スケジュール(第1回)
- 公募開始:令和8年6月29日(月)
- 申請受付:令和8年9月30日(水)
- 応募締切:令和8年10月30日(金)18:00(厳守)
- 補助金交付候補者の採択発表:令和9年1月頃(予定)
※公募要領・スケジュールは改訂される可能性があります。申請をご検討の際は、公式サイトの最新スケジュールを確認しておくと安心です。
新事業進出枠・革新的新製品枠の違いのまとめ
両枠の違いは、突き詰めると「既存事業の延長で新製品・サービスを開発するか」「既存事業とは別の新市場に進出するか」という取り組みの性質の違いです。
特に以下の点は押さえておきましょう。
- 革新的新製品・サービス枠は自社の技術力を活かした新製品・新サービス開発が対象、新事業進出枠は新市場・高付加価値事業への進出が対象
- 新事業進出枠には「社会的新規性」を裏付けるデータ・統計、または「高付加価値化・高価格化」を裏付ける調査・分析という追加審査基準がある
- 補助上限額は新事業進出枠のほうが大きいが、建物費の対象可否と創業1年未満は対象外という違いも判断材料になる
- 上限額の大きさで選ぶのではなく、自社の計画が制度の要件に自然に当てはまっているかを優先する
「自社の計画はどちらの枠に近いか分からない」「両方の要件を満たせそうだが、どちらで申請すべきか判断がつかない」など、具体的なご相談はお気軽にご連絡ください。初回相談は無料、全国オンライン(Zoom)対応しています。
参考情報
本記事の内容は、以下の一次情報および当サイトの関連記事をもとに作成しています。申請を検討される際は、最新の公募要領・スケジュールを公式サイトでご確認ください。
執筆:中小企業診断士×行政書士 瀧澤はるか


