新事業進出・ものづくり補助金「新事業進出枠」とは?対象になる事業を解説

新事業進出・ものづくり補助金(正式名称:新事業進出・ものづくり商業サービス補助金)には、「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」「グローバル枠」の3つの枠があります。このうち「新事業進出枠」は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出に取り組む事業者を対象とし、3枠のなかでも補助上限額が最も大きく設定されています。
本記事では、第1回公募要領を参考に、新事業進出枠に絞って、対象になる事業・ならない事業の具体例と、この枠だけに設けられた審査基準、補助上限額・経費・スケジュールなど申請前に押さえておくべきポイントをお伝えします。
新事業進出・ものづくり補助金「新事業進出枠」とは
本枠は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援することを目的としています。補助対象となるには、次の2つの要件を両方満たす必要があります。
- ①新規性:新たに製造・提供する製品等が、自社にとって新規性を有すること(過去に製造等していた製品等を再製造等することは対象外)
- ②新市場性:その製品等が属する市場が、自社にとって新たな市場(既存事業で対象にしていなかったニーズ・属性を持つ顧客層)であること

ここでいう「新規性」は、あくまで自社にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)である必要はありません。なお、申請予定の公募回の公募開始日以降に初めて取り組んでいる事業であれば、新規性を有するものとみなされます。
新事業進出枠で対象にならない事業の具体例
公募要領では、新事業進出枠に該当しない事業のパターンが具体的に示されています。申請前に、自社の計画が該当していないか確認しておきましょう。
- 既存の製品等の製造量・提供量を増大させる場合
- 過去に製造していた製品等を再製造等する場合
- 単に既存の製品等の製造方法を変更する場合
- 製品等の性能が定量的に計測できる場合に、その性能が有意に異なるとは認められない場合
- 既存の製品等と対象とする市場が同一である場合(既存需要が新製品等の需要に代替される場合・単なるメニューの追加と考えられる場合)
- 既存の製品等の市場の一部のみを対象とするものである場合
- 既存の製品等が対象であって、単に商圏が異なるものである場合
「新しいこと」に取り組んでいるつもりでも、既存事業の延長線上と判断されるケースが多く挙げられています。自社の計画がどのパターンにも当てはまらないか、申請前に照らし合わせておくことが重要です。
審査で重視される「新市場性・高付加価値性」
新事業進出枠には、他の2枠にはない専用の審査項目が設けられています。事業計画書では、以下の①②のうち、いずれかを選択して裏付けを示す必要があります。
- ①社会における新規性:製品等が属するジャンル・分野の、社会における一般的な普及度や認知度が低いこと。それを裏付ける客観的なデータ・統計等が求められる
- ②高付加価値化・高価格化:同一のジャンル・分野の中で、当該製品等が高水準の高付加価値化・高価格化を図るものであること
つまり、「自社にとって新しい」というだけでなく、「市場全体で見てもまだ珍しい」か「同じジャンルの中でも一段高い価値・価格を狙う」かのどちらかを、データや根拠とともに説明できるかが審査のポイントになります。この点は、革新的新製品・サービス枠にはない、新事業進出枠特有の審査基準です。
新事業進出枠の補助上限額・補助率
| 従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|
| 1〜20人 | 2,500万円(賃上げ特例3,000万円) | 中小企業者:1/2(2/3) |
| 21〜50人 | 4,000万円(賃上げ特例5,000万円) | |
| 51〜100人 | 5,500万円(賃上げ特例7,000万円) | |
| 101人以上 | 7,000万円(賃上げ特例9,000万円) |
補助下限額は750万円です。補助事業実施期間は交付決定日から14か月以内(採択発表日から16か月以内)と、革新的新製品・サービス枠(10か月以内)より長めに設定されています。
補助対象経費
主な補助対象経費は以下のとおりです。
- 機械装置・システム構築費:新事業進出枠は建物費のいずれかとあわせて必須
- 建物費:新事業進出枠・グローバル枠のみ対象で、革新的新製品・サービス枠にはない経費区分
- 運搬費・技術導入費・知的財産権等関連経費
- 外注費・専門家経費
- クラウドサービス利用費・原材料費・広告宣伝販売促進費

新市場向けの店舗・工場の新設や改修を伴う計画では、この建物費が対象になる点が新事業進出枠ならではのメリットです。一方、事務所家賃や汎用パソコン・スマートフォン、自社の人件費、税理士・弁護士費用などは対象外です。
対象となる事業者
日本国内に本社及び補助事業実施場所を有する中小企業者等が対象です。業種によって資本金・従業員数の基準が異なります。
- 製造業・建設業・運輸業など:資本金3億円以下 または 常勤従業員300人以下
- 卸売業:資本金1億円以下 または 常勤従業員100人以下
- サービス業(ソフトウェア業等を除く):資本金5,000万円以下 または 常勤従業員100人以下
- 小売業:資本金5,000万円以下 または 常勤従業員50人以下
このほか、応募申請時点で常勤従業員数が0名の事業者は対象外です。また新事業進出枠は、新規設立・創業後1年に満たない事業者も対象外となる点に注意が必要です(決算書1期分以上の提出が必須)。新規性・新市場性を重視する枠であるにもかかわらず、創業間もない事業者ほど対象外になりやすいという、見落としやすいポイントです。
採択のための基本要件
採択されるには、補助事業終了後3〜5年の事業計画において、以下をすべて満たす必要があります。
- ①付加価値額要件:付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率を+4.0%以上増加させること
- ②賃上げ要件:1人あたり給与支給総額の年平均成長率を+3.5%以上増加させること(未達の場合、補助金返還義務あり)
- ③事業場内最賃水準要件:事業場内最低賃金を、地域別最低賃金より+30円以上高い水準に毎年維持すること(未達の場合、補助金返還義務あり)
- ④ワークライフバランス要件:次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定・公表していること
- ⑤子育て等に関する職場環境整備要件:指定の取り組みを1つ実施すること
- ⑥金融機関要件:金融機関等から資金提供を受けて実施する場合、事業計画の確認を受けていること
①〜③は未達成の場合に補助金の返還義務が発生する重要な要件です。④の一般事業主行動計画は、公表申請から掲載まで1〜2週間程度かかるため、対象となる場合は早めの準備をおすすめします。
新事業進出・ものづくり補助金の申請スケジュール(第1回)
- 公募開始:令和8年6月29日(月)
- 申請受付:令和8年9月30日(水)
- 応募締切:令和8年10月30日(金)18:00(厳守)
- 補助金交付候補者の採択発表:令和9年1月頃(予定)
※公募要領・スケジュールは改訂される可能性があります。申請をご検討の際は、公式サイトの最新スケジュールを確認しておくと安心です。
新事業進出・ものづくり補助金 新事業進出枠のまとめ
「新事業進出枠」は、既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援する枠で、3枠のなかでも補助上限額が大きく、建物費も対象になる点が特徴です。一方で、新規性・新市場性の説明責任は他枠より重く、創業間もない事業者は対象外になる点にも注意が必要です。
特に以下の点は押さえておきましょう。
- 補助対象となるには「自社にとっての新規性」と「新たな市場への進出」を両方満たす必要がある
- 審査では「社会的な新規性」か「同ジャンル内での高付加価値化」のいずれかをデータで裏付ける必要がある
- 補助上限額は2,500万円〜7,000万円(賃上げ特例3,000万円〜9,000万円)、補助下限額は750万円
- 建物費が対象経費に含まれる(革新的新製品・サービス枠にはない特徴)
- 新規設立・創業後1年未満の事業者は対象外
- 第1回応募締切は令和8年10月30日18:00(最新の公募要領で要確認)
「自社の計画は新規性・新市場性をどう説明すればよいか」「革新的新製品・サービス枠とどちらが向いているか」など、具体的なご相談はお気軽にご連絡ください。初回相談は無料、全国オンライン(Zoom)対応しています。
参考情報
本記事の内容は、以下の一次情報をもとに作成しています。申請を検討される際は、最新の公募要領・スケジュールを公式サイトでご確認ください。
執筆:中小企業診断士×行政書士 瀧澤はるか


