新事業進出・ものづくり補助金の注意点|申請前によくある疑問に答えます

新事業進出・ものづくり補助金 注意点

これまで、新事業進出・ものづくり補助金の「革新的新製品・サービス枠」「新事業進出枠」のポイントをそれぞれ解説してきましたが、実際にご相談を受けていると、制度の説明だけでは伝わりきらない新事業進出・ものづくり補助金の注意点が繰り返し話題にのぼります。

本記事では、第1回公募要領を参考に、これまでのご相談でよく聞かれた疑問を取り上げ、それぞれの背景にある注意点をあわせてお伝えします。各枠の詳細は、上記2記事もあわせてご覧ください。

対象になる事業を巡る注意点

まずは「そもそも対象になるか」という、両枠に共通する入り口部分の注意点から見ていきます。

Q.新しい機械を導入するだけでも、この補助金の対象になりますか?

A.単に機械装置・システム等を導入するだけで、新製品・新サービスの開発を伴わない場合は対象外です。これはどちらの枠にも共通する考え方で、「新しい設備を入れること」自体が目的化していないか、その設備でどのような新製品・新サービスを生み出すのかを具体的に説明できるかが、審査上のポイントになります。

Q.応募申請の時点で常勤の従業員が1人もいない会社でも申請できますか?

A.いいえ、応募申請時点で常勤従業員数が0名の事業者は、どちらの枠でも対象外です。代表者おひとりで事業を回されている場合は、申請前に常勤従業員の要件を満たせているか確認しておきましょう。

新事業進出・ものづくり補助金申請前の注意点

革新的新製品・サービス枠を選ぶときの注意点

革新的新製品・サービス枠は、旧・ものづくり補助金の主軸を引き継ぐ枠として、関心を持たれている方も多いのではないでしょうか。ここでは、この枠を検討するときに押さえておきたい注意点をまとめます。

Q.新事業進出枠のほうが補助上限額が大きいので、そちらを検討したほうがよいでしょうか?

A.上限額だけを見ると新事業進出枠が魅力的に映りますが、新事業進出・ものづくり補助金は2026年6月に始まったばかりの制度で、申請実績はまだ蓄積されていません。そのうえで制度の枠組みを見ると、新事業進出枠には新規性・新市場性の審査基準や創業1年未満は対象外といった追加の制約がある一方、革新的新製品・サービス枠にはその制約がなく、旧・ものづくり補助金の主軸を引き継ぐ枠として認知度も高いため、対象になり得る事業者の裾野は革新的新製品・サービス枠のほうが広いと考えられます。上限額の大きさだけで枠を選ばず、自社の計画がどちらの枠の性質に近いかで判断するとよいでしょう。

Q.革新的新製品・サービス枠は、新しい市場に出さなくても対象になりますか?

A.公募要領上、対象になると読み取れます。新事業進出枠には「①新規性」に加えて「②新市場性(既存事業とは異なる新たな市場への進出)」が要件として明記されているのに対し、革新的新製品・サービス枠の概要にはこの新市場性の要件が定められていません。つまり、既存の顧客層に向けた新製品・新サービス開発であっても、革新的新製品・サービス枠であれば対象になり得るということです。新しい市場への進出まで求められる新事業進出枠との違いとして、押さえておきましょう。

Q.革新的新製品・サービス枠は、補助事業の実施期間が短いと聞きました。本当ですか?

A.はい、交付決定日から10か月以内(採択発表日から12か月以内)で、新事業進出枠・グローバル枠(いずれも14か月以内)より短く設定されています。新製品・新サービスの開発から検証まで、逆算したスケジュールを早めに組んでおくと安心です。

新事業進出枠を選ぶときの注意点

ここからは、新事業進出枠を検討する際に特に注意しておきたいポイントをまとめます。

Q.新事業進出枠の「新規性」は、日本初・世界初のような珍しさが必要ですか?

A.いいえ、あくまで自社にとっての新規性で足ります。過去に自社が製造・提供していなかった製品等であれば新規性を有するとみなされ、世の中で見て前例がないことまでは求められません。この点は勘違いされやすいので、頭の片隅に置いておきましょう。

Q.新事業進出枠の審査基準(新規性・高付加価値化)は、両方とも満たす必要がありますか?

A.「社会における新規性」と「高付加価値化・高価格化」は選択制で、どちらか一方を裏付けられれば足ります。①は、製品等が属するジャンル・分野そのものの社会的な普及度・認知度の低さをデータ・統計で示す軸です。②は、同じジャンル・分野の中で、一般的な付加価値や相場価格と比較して、自社の製品等が高水準の高付加価値化・高価格化を図れるかを調査・分析で示す軸で、業界内の相場を調べたうえで自社製品との差を示すだけでなく、その高付加価値化・高価格化の源泉となる自社の強みまで説明できるかが問われます。両方をデータで証明しようとして計画が複雑になりすぎるケースも見かけるので、自社の計画にはどちらの軸のほうが説明しやすいか、先に決めておくと進めやすくなります。

Q.創業したばかりの会社でも、新事業進出枠は使えますか?

A.新事業進出枠は、創業後1年未満の事業者は対象外で、決算書1期分以上の提出が必須です。新規性や新市場性を重視する枠であるにもかかわらず、創業間もない事業者ほど対象外になりやすいのは見落としやすい注意点です。革新的新製品・サービス枠にはこの制限がないため、あわせて検討しておきましょう。

Q.店舗の改装や工場の新設にかかる費用は、どちらの枠でも対象になりますか?

A.建物費は新事業進出枠・グローバル枠のみが対象で、革新的新製品・サービス枠には建物費という経費区分自体がありません。新市場向けの店舗・工場への投資を計画している場合、この時点で候補が新事業進出枠に絞られてきます。

採択後に気をつけたい注意点

申請・採択がゴールではなく、その後も続く要件があることも、あらかじめ知っておきたいポイントです。

Q.補助金が交付されたら、そこで手続きは一区切りですか?

A.補助事業終了後3〜5年の事業計画で、付加価値額+4.0%以上・賃上げ+3.5%以上などの成長要件を満たし続ける必要があります。未達の場合は補助金の返還義務が生じるため、交付後も継続してコミットする制度だと捉えておくと安心です。

新事業進出・ものづくり補助金の注意点まとめ

今回取り上げた注意点は、実際のご相談で繰り返し出てくる疑問がベースになっています。特に以下の点は押さえておきましょう。

  • 設備導入だけでは対象外。新製品・新サービスの開発を伴うことが前提(両枠共通)
  • 革新的新製品・サービス枠は新しい市場への進出までは求められないぶん、対象になり得る事業者の裾野が広い
  • 新事業進出枠の新規性は「自社にとって」で足りるが、審査基準(新規性・高付加価値化)は選択制
  • 創業1年未満は新事業進出枠の対象外建物費は新事業進出枠・グローバル枠のみ対象
  • 交付後も成長要件を満たし続ける必要があり、未達は返還義務あり

「自社の計画がどの注意点に当てはまりそうか」「もっと詳しく自社のケースを相談したい」など、具体的なご相談はお気軽にご連絡ください。初回相談は無料、全国オンライン(Zoom)対応しています。

参考情報

本記事の内容は、以下の一次情報および当サイトの関連記事をもとに作成しています。申請を検討される際は、最新の公募要領・スケジュールを公式サイトでご確認ください。

執筆:中小企業診断士×行政書士 瀧澤はるか