新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは?3つの枠と全体像を中小企業診断士×行政書士が解説

これまで多くの中小企業が活用してきた「ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)」と「中小企業新事業進出促進補助金」が統合され、「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」として生まれ変わりました。令和8年6月29日に第1回公募が始まっています。
本記事では、制度の全体像と3つの補助対象事業枠、申請前に押さえておくべきポイントをお伝えします。
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金とは
本補助金は、中小企業等が行う技術的革新性のある製品・サービスの開発や既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出、海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化を後押しし、企業規模の拡大・付加価値向上を通じた生産性向上と賃上げにつなげることを目的とした制度です。
補助金は経済産業省・中小企業庁が所管し、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が事務局を運営しています。詳細は新事業進出・ものづくり商業サービス補助金 特設サイトでご確認いただけます。
3つの補助対象事業枠
新事業進出・ものづくり商業サービス補助金では、自社の事業展開の目的に合わせて、以下の3つの枠から選んで申請します。
| 枠 | 概要 | 補助上限額 | 補助率 |
|---|---|---|---|
| 革新的新製品・ サービス枠 |
革新的な新製品・新サービス開発の取組を支援 | 最大2,500万円 (賃上げ特例3,500万円) |
中小企業者:1/2(2/3) 小規模・再生事業者:2/3 |
| 新事業進出枠 | 既存事業とは異なる新市場・高付加価値事業への進出を支援 | 最大7,000万円 (賃上げ特例9,000万円) |
中小企業者:1/2(2/3) |
| グローバル枠 | 海外市場開拓(輸出)に向けた国内の輸出体制強化を支援 | 最大7,000万円 (賃上げ特例9,000万円) |
中小企業者:2/3 |
※補助下限額は、革新的新製品・サービス枠が100万円、新事業進出枠・グローバル枠が750万円です。
※補助上限額は従業員数によって段階的に設定されています。
※()内は賃上げ特例適用時の金額です。
革新的新製品・サービス枠は、既存製品・サービスの改善ではなく、顧客に新たな価値を提供する新製品・新サービスの開発が対象です。単なる機械の入れ替えは対象外です。
新事業進出枠は、自社にとって新規性のある製品・サービスで、かつ新しい市場(既存事業で対象にしていなかった顧客層)に進出する取組が対象です。既存製品の増産や、単なる製造方法の変更は対象になりません。
グローバル枠は、自社製品を活用して自発的に新たな海外販路を開拓するための、国内製造拠点強化の取組が対象です。取引先主導の輸出は対象外です。

対象となる事業者
日本国内に本社及び補助事業実施場所を有する中小企業者等が対象です。業種によって資本金・従業員数の基準が異なります。
- 製造業・建設業・運輸業など:資本金3億円以下 または 従業員300人以下
- 卸売業:資本金1億円以下 または 従業員100人以下
- サービス業(ソフトウェア業等を除く):資本金5,000万円以下 または 従業員100人以下
- 小売業:資本金5,000万円以下 または 従業員50人以下
このほか、応募申請時点で従業員数が0名の事業者は対象外です。また新事業進出枠は、新規設立・創業後1年に満たない事業者も対象外となる点に注意が必要です(決算書1期分以上の提出が必須)。
採択のための基本要件
採択されるには、補助事業終了後3〜5年の事業計画において、以下をすべて満たす必要があります。
- 付加価値額要件:付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の年平均成長率を+4.0%以上増加させること
- 賃上げ要件:1人あたり給与支給総額の年平均成長率を+3.5%以上増加させること(未達の場合、補助金返還義務あり)
- 事業場内最賃水準要件:事業場内最低賃金を、地域別最低賃金より+30円以上高い水準に毎年維持すること(未達の場合、補助金返還義務あり)
- ワークライフバランス要件:次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を策定・公表していること
- 子育て等に関する職場環境整備要件:ライフデザインサービスの活用や、家事代行・ベビーシッター利用支援など、指定の取り組みを1つ実施すること
- 金融機関要件:金融機関等から資金提供を受けて実施する場合、事業計画の確認を受けていること
従来の「ものづくり補助金」と比べると、付加価値額要件が3.0%から4.0%に引き上げられたほか、ワークライフバランス要件・子育て等要件が新設されている点が大きな変更点です。事前準備(一般事業主行動計画の公表など)に1〜2週間かかるため、早めの着手が欠かせません。
補助対象経費
主な補助対象経費は以下のとおりです。
- 機械装置・システム構築費:全枠共通で必須(新事業進出枠・グローバル枠は建物費のいずれかでも可)
- 建物費:新事業進出枠・グローバル枠のみ対象
- 技術導入費・知的財産権等関連経費:知的財産権等の導入や取得に関する経費
- 外注費・専門家経費:検査・加工・設計等の外注費、専門家への謝金等
- クラウドサービス利用費・原材料費・広告宣伝販売促進費
- 海外旅費・通訳翻訳費:グローバル枠のみ対象
一方、事務所家賃、汎用パソコン・スマートフォン、自社の人件費、税理士・弁護士費用などは対象外です。経費区分ごとに補助上限(対象経費総額の1/3、1/4、1/5など)が設定されているため、計上額には注意が必要です。
申請前に必ず知っておくべき3つのポイント
実際に申請を検討するにあたり、特に誤解しやすい3つのポイントをご紹介します。
① 「後払い」である
補助金は事業実施後に請求して初めて支払われる後払いです。採択されてもすぐに入金されるわけではないため、事業実施中の資金繰りは自己資金や融資で賄う計画が必要です。
② 交付決定の前に発注・購入してはいけない
採択の通知(補助金交付候補者の決定)を受けても、その時点ではまだ発注・契約・購入はできません。交付決定の通知を受けた後でなければ、補助対象経費として認められません。採択=即発注ではない点に注意してください。
③ 採択後も要件維持が必要、未達は返還義務あり
採択後も、補助事業終了後3〜5年間にわたり事業計画の進捗(事業化状況報告)を報告する義務があります。賃上げ要件・事業場内最賃水準要件が未達の場合は補助金の返還が求められます。実現可能な目標設定が重要です。また申請にはGビズIDプライムアカウントの取得が必須で、発行に1週間程度かかるため、早めの準備をおすすめします。
第1回公募スケジュール
第1回公募の主な日程は以下のとおりです。
- 公募開始:令和8年6月29日(月)
- 申請受付:令和8年9月30日(水)
- 申請締切:令和8年10月30日(金)18:00(厳守)
- 補助金交付候補者の採択発表:令和9年1月頃(予定)
※公募要領は今後改訂される可能性があります。申請をご検討の際は、必ず公式サイトの最新スケジュールをご確認ください。
申請の流れ
申請から入金までの大まかな流れは以下のとおりです。
- 公募・申請 ─ 電子申請システム(GビズIDが必要)で事業計画書等を提出
- 書面審査・口頭審査(該当者のみ) ─ 外部有識者による審査委員会が審査
- 補助金交付候補者の採択発表 ─ 令和9年1月頃(予定)
- 交付申請・交付決定 ─ 採択発表日から原則2か月以内に交付申請
- 補助事業の実施 ─ 交付決定後に発注・購入・実施
- 実績報告・確定検査 ─ 事業完了後に報告書を提出し、検査を受ける
- 補助金の請求・支払い ─ 確定後に請求、入金
- 事業化状況報告 ─ その後3〜5年間、毎年報告が必要

参考情報
本記事の内容は、以下の一次情報をもとに作成しています。最新の公募要領・スケジュールは必ず公式サイトでご確認ください。
まとめ
「新事業進出・ものづくり商業サービス補助金」は、旧ものづくり補助金と新事業進出補助金が統合された制度で、補助上限額の大幅な引き上げと引き換えに、要件も一段と厳格になっています。
特に以下の点は必ず押さえておいてください。
- 補助上限額は最大7,000万円(賃上げ特例で9,000万円)まで拡大
- 付加価値額要件は+4.0%に引き上げ、ワークライフバランス要件等が新設
- 補助金は後払い。交付決定前の発注はNG
- 賃上げ・最賃要件の未達は返還義務あり
- 第1回申請締切は令和8年10月30日18:00(最新の公募要領で要確認)
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