東京都の補助金「躍進的設備投資支援事業」第14回|対象・助成率・スケジュール

東京都躍進的設備投資支援事業第14回

東京都中小企業振興公社が実施する「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」(以下「躍進的設備投資支援事業」)は、都内中小企業者の設備投資を支援する東京都の補助金(制度上の正式名称は「助成金」)です。2026年9月2日、次回となる第14回(令和8年度第3回)の募集要項が公表されました。

本記事では、東京都中小企業振興公社「躍進的設備投資支援事業」第14回募集ページで公開されている募集要項をもとに、制度の対象・助成率・申請スケジュールをまとめます。国(中小企業基盤整備機構)が実施する省力化投資補助金や新事業進出・ものづくり補助金とは実施主体が異なる、東京都独自の制度である点も押さえておきましょう。

躍進的設備投資支援事業とはどんな補助金か

本事業は、都内中小企業者が「製品・サービスの質的向上」による競争力強化や「生産能力の拡大」のための生産性向上を進める際に必要となる機械設備等の導入経費の一部を助成する制度です。対象となるのは、税法上の固定資産のうち「機械装置」「器具備品」「ソフトウェア」に該当する設備の新規導入です。

実施主体は国ではなく東京都中小企業振興公社であるため、対象となるのは都内で実質的に事業を行っている中小企業者・中小企業団体等に限られます。基準日(第14回は令和8年10月1日)現在で、都内に登記簿上の本店又は支店があり、都内事業所で継続的に2年以上事業を行っていることなどが要件になります。

なお、機械設備を設置する工場等が東京都内にない場合でも、本店が都内にあれば対象になり得ます。設置場所が神奈川県・埼玉県・千葉県・群馬県・栃木県・茨城県・山梨県のいずれかの工場等であり、都内に登記簿上の本店があることなど一定の条件を満たせば、隣接県の工場に導入する設備も助成対象になります。「都内に事業所がなければ対象外」と誤解されがちなポイントなので、近隣県に工場をお持ちの事業者様も一度対象になるか確認してみることをおすすめします。

躍進的設備同士支援事業とは

躍進的設備投資支援事業で助成対象となる3つの事業区分

助成対象事業は、次のⅠ〜Ⅲのいずれかに合致する必要があります。いずれの区分も、設備投資後に従業員一人当たりの付加価値額(労働生産性)を年率3%以上向上させる計画であることが共通の条件です。

Ⅰ 競争力強化

競争力強化及び生産性向上のために必要となる機械設備等を新たに導入する事業が対象です。募集要項では、以下のような事業例が示されています。

  • 量産体制の構築
  • 安定供給体制の確立
  • 多品種少量生産への対応
  • 生産工程の改善
  • 一貫加工の実現
  • 製品・技術の品質向上、信頼性確保
  • 特殊素材・難加工・複雑形状への対応
  • 短納期への対応、コストダウン

これらはあくまで例示であり、上記に当てはまらない事業計画であっても、競争力強化につながる内容であれば対象になり得るとされています。3区分の中でも最も申請しやすい、汎用性の高い区分といえるでしょう。

Ⅱ 後継者チャレンジ

事業承継を契機として、後継者による事業多角化や新たな経営課題への取り組みに必要となる機械設備を導入する事業が対象です。事業例としては、事業転換に向けた新商品の生産や、新事業分野への参入などが挙げられています。

この区分は対象者・承継方法の要件がやや細かく設定されています。基準日の3年前から助成対象期間の起点の前日まで(第14回の場合、令和5年10月1日〜令和9年3月31日)に事業承継(M&Aを含む)を行った、または行う予定の事業者が対象です。承継方法は、同一法人内での代表者交代、法人間のM&A(吸収合併・吸収分割・事業譲渡)、個人事業の廃業・開業を伴う事業譲渡などに限られます。単なるグループ内の事業再編や、店舗・車両など有形資産のみの引継ぎは、事業承継とはみなされない点に注意が必要です。また、代表者交代等による承継の場合は、二次審査(面接)に後継者本人の出席が必須とされています。

Ⅲ アップグレード促進

競争力強化及び生産性向上による成長を実現し、取引先企業の価格転嫁や賃上げを後押しするために必要となる機械設備等を導入する事業が対象です。事業例としては、機械の高度化に伴う受注増への対応や、サプライチェーンの都内回帰などが挙げられています。

3区分の中で唯一、ゼロエミッションへの取組みと一定の賃上げの実施が必須要件です。加えて、取引先企業(受注企業)が発行する「生産(増産)要請に関する証明書」や、「パートナーシップ構築宣言」の写しの提出も必要になります。要件のハードルは高い分、助成額の上限は1億円〜2億円と他の区分より大きく設定されています。

東京都躍進的設備投資支援事業の助成対象

助成率・助成限度額

助成率と助成限度額は、事業区分・申請者区分・選択するコース(通常/ゼロエミ/賃上げ)によって異なります。第14回募集要項に基づく金額は以下のとおりです。

事業区分 申請者区分 通常コース ゼロエミコース 賃上げコース 助成額
Ⅰ 競争力強化 中小企業者 1/2以内 3/4以内 3/4以内 100万円〜1億円
Ⅰ 競争力強化 小規模企業者 2/3以内 3/4以内 4/5以内
Ⅱ 後継者チャレンジ - 2/3以内 3/4以内 3/4以内
Ⅲ アップグレード促進 - 3/4以内(ゼロエミ・賃上げ両方の要件を満たす必要あり) 1億円〜2億円

賃上げコースで採択された場合、助成金は2回に分割して交付されます。1回目は通常コースの助成率で、2回目は賃金引上げ計画の達成確認後に賃上げコースの助成率との差額分が交付される仕組みです。助成金を受け取り終えるまでの期間が長くなる点は事前に把握しておくとよいでしょう。

助成対象経費と対象にならない経費

助成対象経費は、機械装置・器具備品・ソフトウェアの新規導入、搬入・据付等に要する経費です。1基あたり50万円(税抜)以上が対象で、ソフトウェア単体の場合は1基300万円以上2,000万円以下(複数基の合計でも2,000万円以下)という下限・上限があります。

見積書はメーカー・型番・内訳項目等の記載があるものが必要で、原則として同一メーカー・同一型番で2社の見積書を取得し、安価な方を採用する必要があります。「一式」表記の見積書は対象外となる点にも注意が必要です。

一方、既存設備の改良・修繕、中古品の導入、不動産・車両・船舶等の導入、年間保守費用やサブスクリプション等の継続的な費用、汎用性のあるパソコン・サーバー等は助成対象になりません。単なる設備更新や、量産・販売の目途が立っていない研究開発目的の事業計画も対象外です。

躍進的設備投資支援事業 第14回の申請スケジュール

第14回の申請から助成金交付までの流れは、以下のとおり予定されています。申請状況等により日程が変更される場合があるため、最新情報は公社ホームページでご確認ください。

項目 時期
申請書類提出(電子申請) 令和8年10月23日9時〜11月24日13時
一次審査(資格・経理・事業計画) 12月中旬〜1月中旬
一次審査結果通知 1月下旬
二次審査(面接・価格審査、一次通過者のみ) 2月中旬〜2月下旬
助成対象事業者決定 3月中旬
助成対象期間 令和9年4月1日〜最長令和10年9月30日

助成金は、完了報告・完了検査を経て設備導入代金の支払い後に交付される「後払い」方式です。交付決定から完了報告までの資金は、いったん自社で用意しておく必要があります。

申請はデジタル庁の電子申請システム「Jグランツ」で行います。利用には「GビズIDプライム」のアカウントが必要で、発行には審査で2週間程度かかるとされているため、申請を検討する場合は早めにアカウントを取得しておくことをおすすめします。

申請にあたって確認しておきたいポイント

申請資格の要件は細かく定められています。特に次の点は、申請を検討する早い段階で確認しておくとよいでしょう。

  • 都内に登記簿上の本店又は支店があり、都内事業所で継続的に2年以上事業を行っていること(申請者としての資格要件。機械設備の設置場所そのものが都内である必要はなく、本店が都内にあれば前述のとおり隣接県の工場等も対象になり得ます)
  • 東京都に納税し、法人事業税・法人都民税等の滞納がないこと
  • 本助成事業の同一回での申請は一企業一申請に限られること
  • 同一の機械設備について、国・都道府県・区市町村等から重複して助成を受けていないこと
  • 過去に公社の助成事業を受けている場合、事業化状況報告書等を期日までに提出していること

賃上げコースを選択する場合は、賃金引上げ計画期間(1年間)において給与支給総額を基準給与支給総額の1.02倍以上に増加させること、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にすることが要件になります。助成率が優遇される分、達成できなかった場合の影響も大きいため、無理のない計画かどうかを慎重に検討する必要があります。

制度の詳細や自社の事業計画がどの区分に該当しそうかなど、具体的なご相談はお気軽にご連絡ください。

まとめ

東京都の補助金「躍進的な事業推進のための設備投資支援事業」は、東京都中小企業振興公社が実施する、都内中小企業向けの設備投資支援制度です。第14回(令和8年度第3回)の要点は以下のとおりです。

  • 助成対象事業はⅠ競争力強化・Ⅱ後継者チャレンジ・Ⅲアップグレード促進の3区分
  • 助成率は事業区分・申請者区分・コース(通常/ゼロエミ/賃上げ)によって1/2〜4/5まで幅がある
  • 助成額は100万円〜1億円(Ⅲアップグレード促進のみ1億円〜2億円)
  • 申請書類提出期間は令和8年10月23日9時〜11月24日13時、電子申請「Jグランツ」を利用
  • Jグランツの利用には「GビズIDプライム」が必要で、アカウント発行に2週間程度かかる点に注意

国の補助金と異なり実施主体が東京都中小企業振興公社である点、助成金が後払いである点など、申請前に押さえておきたい特徴がいくつかあります。「自社の事業計画がどの区分に該当するか分からない」「申請要件を満たしているか確認したい」といった場合は、早めにご相談ください。

参考情報

本記事の内容は、以下の一次情報をもとに作成しています。申請を検討される際は、必ず最新の募集要項を公式サイトでご確認ください。

執筆:中小企業診断士×行政書士 瀧澤はるか