省力化投資補助金の活用が向いている会社とは|経営者目線で見る判断のポイント

「省力化投資補助金の活用は、自社に向いているのだろうか」――中小企業診断士としてご相談を受ける中で、このような声をよく耳にします。制度の対象になるかどうかだけでなく、そもそも自社の経営課題に合った投資といえるかどうかは、申請を検討する前に整理しておきたいポイントです。
本記事では、中小企業省力化投資補助金(一般型)公式サイトおよび第8回公募要領を参考に、審査で重視される観点をもとに、経営視点でどんな会社に省力化投資補助金の活用が向いているのかをお伝えします。制度の基本的な概要はこちらの解説記事もあわせてご覧ください。
省力化投資補助金の活用を検討する前に押さえておきたいこと
本事業は、人手不足に悩む中小企業等が、ICTやIoT、AI、ロボット等を活用した「オーダーメイド設備」を導入することで、生産性向上や付加価値額の増加、そして賃上げにつなげることを目的とした制度です。
ここでいうオーダーメイド設備とは、外部のシステムインテグレータとの連携などを通じて、事業者ごとの業務に合わせて個別に設計された機械装置やシステムを指します。汎用設備であっても、周辺機器や搭載機能を自社の環境に合わせて変える場合や、複数の汎用設備を組み合わせることでより高い省力化効果や付加価値を生み出せると認められる場合には、オーダーメイド設備とみなされる余地があります。
単にカタログ掲載の汎用製品を単体で導入する計画は、一般型の対象にはなりません。この点が、後ほど触れる「カタログ注文型」との大きな違いです。
省力化投資補助金の活用が向いている会社の特徴|経営視点でみる5つのポイント
公募要領の審査項目(技術面・計画面・政策面)をふまえると、次のような会社は省力化投資補助金の活用を前向きに検討しやすいと考えられます。
① 汎用品では解決しにくい、自社特有の工程課題がある
作業工程や事業所のレイアウトに合わせて機能・構造を個別に設計する必要がある会社は、一般型の趣旨に合っています。逆に、既存のカタログ製品でボトルネックが解消できるのであれば、そちらの選択肢も含めて検討する価値があります。
② 省力化指数や投資回収期間、付加価値額の伸びを数字で示せる
技術面の審査では、省力化指数(削減される業務時間の割合)、投資回収期間、付加価値額の年平均成長率について、算出根拠とともに示すことが求められます。日頃から数値で業務改善を捉える習慣がある会社ほど、事業計画に落とし込みやすいポイントです。
③ 賃上げ目標を経営計画として打ち出せる
基本要件として、1人当たり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上、事業場内最低賃金を地域最低賃金+30円以上とすることなどが求められます。加えて、補助事業完了を待たない「足下の賃上げ」の実現可能性も計画面の評価対象です。賃上げを経営方針として描ける体力のある会社ほど、審査上も有利に働きやすいといえます。
④ 実行体制と資金調達のめどが立っている
計画面の審査では、補助事業を遂行する社内外の体制や最近の財務状況、金融機関等からの資金調達の見込みも評価対象になります。設備投資の実行体制や資金計画がある程度固まっている会社のほうが、計画の実現可能性を示しやすい傾向があります。
⑤ 地域貢献や事業承継など、政策面でも語れるストーリーがある
政策面の審査では、地域経済への波及効果、事業承継を契機とした取り組み、先端的なデジタル技術の活用などが評価の観点として挙げられています。事業承継やM&Aを実施した事業者への加点制度もあるため、該当する場合は審査で考慮される可能性があります。

省力化投資補助金の活用を見送ってもよいかもしれないケース
一方で、次のような場合は、一般型での省力化投資補助金の活用にこだわらず、別の選択肢もあわせて検討しておくと安心です。
ゼロから新しい事業を立ち上げる計画にも、一般型は必ずしも向いていません。省力化指数の算出は「設備導入により削減される業務に要していた時間」、つまり既存の業務プロセスがあることを前提としているためです。新規出店のように既存事業の延長線上にある場合は潜在的な削減時間を組み込むことが認められていますが、真っさらな新規事業でこの省力化効果を示すのは難しい傾向にあります。
提出書類の面でも、法人の場合は直近2期分の損益計算書・貸借対照表や直近3期分の納税証明書が求められており、一定の事業実績がある事業者を前提とした構成になっています。新しい事業領域への進出そのものを検討している場合は、新事業進出・ものづくり補助金(新事業進出枠)など、別の制度のほうが趣旨に近いといえます。当サイトの解説記事もあわせてご覧ください。
カタログ掲載の汎用製品でボトルネックが解決できる場合は、審査項目が少なく随時受付のカタログ注文型のほうが、手続きの負担は軽くなります。
常勤の従業員がいない会社は、給与支給総額を算出する対象が存在しないため、本事業には応募できないとされています。この点は公募要領上も明確な要件です。
また、賃上げ目標の達成が難しい財務状況にある場合は、慎重な判断が必要です。「足下の賃上げ」について物価上昇率を上回る水準の賃上げが達成されない計画は、審査上大幅に不利になるとされているため、無理のない目標設定ができるかどうかを事前に確認しておきましょう。

省力化投資補助金の活用のまとめ
省力化投資補助金(一般型)は、単に人手不足を解消する設備を導入するだけでなく、賃上げや付加価値向上まで含めた経営計画として評価される制度です。
特に以下の点は判断材料として押さえておきましょう。
- 自社特有の工程課題に合わせたオーダーメイド設備が必要かどうか
- ゼロからの新規事業ではなく、既存事業の省力化を目的とした投資であるか
- 省力化指数・投資回収期間・付加価値額の伸びを数字で示せる体制があるか
- 年平均3.5%以上の賃上げ目標を経営計画として描けるか
- 設備投資の実行体制・資金調達のめどが立っているか
- 地域貢献や事業承継など、政策面でのストーリーも語れるか
「自社の場合、一般型とカタログ注文型のどちらが向いているか」「賃上げ目標の立て方に不安がある」など、具体的なご相談はお気軽にご連絡ください。初回相談は無料、全国オンライン(Zoom)対応しています。
参考情報
本記事の内容は、以下の一次情報をもとに作成しています。申請を検討される際は、必ず最新の公募要領を公式サイトでご確認ください。
- 中小企業省力化投資補助金(一般型) 公式サイト
- 一般型 資料ダウンロードページ(公募要領・様式集)
- 中小企業省力化投資補助金(カタログ注文型) 公式サイト
- 当サイト「省力化投資補助金(一般型)とは」解説記事
- 新事業進出・ものづくり補助金 公式サイト
- 当サイト「新事業進出・ものづくり補助金」解説記事
執筆:中小企業診断士×行政書士 瀧澤はるか

